LASER DEPANELING

PCB設計ガイドライン

パネルの適切な設計は、安価で欠陥が発生しにくいプリント回路基板(PCB)を生産する上できわめて重要な要素です。設計工程で重要なガイドラインと制限事項について把握し、これらを考慮することをおすすめします。

パネルの背景と重要性

複数のPCBを一部同時に、より効果的に加工できるよう、電子回路の生産にパネルが使用されます。各パネルには、複数の個別PCBが搭載されます。各PCBは互いに一定の間隔を開け、分割工程に応じて最適な形で配置されます。

パネル複合材では、はんだ印刷から組み立て、最終的な基板分割まで、実装技術工程が実施されます。

右の写真は、複数の実装済みPCBが搭載されたパネルです。この例では、事前にチャネルがルーター加工されているため、PCBの配置間隔をより大きくする必要があります。

パネルの種類

一般的にPCBの生産には2種類のパネルタイプがあります。それぞれ、パネルに実装されるPCBの構成が異なります。

同種多面付け (AAAA):

同種多面付けでは、同じ回路基板の組み合わせでパネルが構成されます。つまり、パネルごとに1種類のPCBのみが生産されます。実際に最も採用されている生産方法です。

この方法が最も採用されている理由として、いくつか重要な利点が挙げられます。まず、この構成方法は、SMT製造の製造条件にも生産ポートフォリオにも依存しません。次に、この方法の柔軟性と効果は、不均質構成のパネルよりはるかに高いとされます。

異種基板面付け (ABCD):

このパネルでは、異なるPCBを組み合わせた構成になります。つまり、複数種類のPCBを一定の割合で同時に生産できます。

この構成の利点としては、各種のPCBごとに1枚のパネルを準備する必要がなく、各加工作業で大量のPCBを仕上げる必要もないため、在庫と予備品の数を減らすことができます。一方で、信頼性の高い方法で生産の差別化と需要を管理することは困難です。たとえば、PCBが必要なくなった場合、パネルの設計を変更する必要が出たり、需要がないにもかかわらず大量のPCBが生産されてしまいます。

 パネルの利点


パネル形式でPCBを加工する場合、製造会社には以下の大きなメリットがあります。
連続生産
標準化

多数の個別回路基板をパネル形式で配置することにより、パネルの大きさを標準化できます。たとえば、基板のある側面の寸法を均一に揃えることができます。こうすることで、さまざまな調整を行うことなく費用対効果の高い生産を確実に行えます。

安全性

パネルを使用することで、衝撃や振動、機械応力から各PCBをより確実に保護できます。レーザーを使用してデパネリングを行うと、これらによる損傷を完全に回避することもできます。

効率性

はんだ印刷からはんだ付け、試験、デパネリングに至るまでの全製造工程において、回路基板を1枚ずつ製造するより、複数のパネルを一度に加工するほうが効率的です。一般的に、1枚のパネルに配置されるPCBが多くなるほど効率性が上がります。

デパネリングのための工程

PCBの切削および分割には、さまざまな工法があります。これらは、コスト、信頼性、品質の違いによって区別されます。一般的な分割方法は以下のとおりです。

レーザーデパネリング

集光レーザービームを使用することで、物理的な接触なくパネルから個片化できます。一定量の深さを除去する加工を何度も繰り返すことで行われます。

打ち抜き

打ち抜きでは、プレス機を使用したり、切削工具で衝撃を与えたりすることでPCBを製造します。この加工はせん断の原理に基づいています。

ルーター加工

ルーター加工は、回転式切削ヘッドとルータービットにて材料を連続的に切断する機械加工です。

ダイシング

ダイシングでは、実装されたPCBをブレードで切断します。直線のみ加工を行えます。

デパネリング時の課題

 課題


デパネリングを行う場合も、パネル実装を行う場合も、採用する方法を選択するには、以下に示す各種工程の制限事項を考慮する必要があります。
形状

デパネリング時の主な注目点としてPCBの形状があげられます。各工程にはそれぞれ弱点があります。たとえば、ダイシング は直線加工しか行えません。ルーター加工機 は最小半径について制約があるため、自由なデザインが制限されます。一方でレーザーは厚さが2mmを超える材料にはコスト的にみあいません。そのため、用途に応じてどの工法が最適かを判断する必要があります。

技術的クリーン度

医療技術、車載分野など、PCBのさまざまな利用分野において、PCBのクリーン度への要求が高まっていますが、カット後のクリーニングでしか対応できません。特にルーター加工やその他の機械的分割工程では、PCBに粉塵がたまり、故障や歩留まりの低下を招くことがあります。

部品実装

PCBデパネリングにおけるもう1つの課題は、PCBの部品実装です。PCBの用途に応じて、さまざまな電子部品がPCBの部品面・半田面に実装されます。デパネリング工程によって電子部品と切断面の間の最小間隔を考慮する必要があります。

パネル構造

PCBの面付けとデパネリング工程の選択は、パネルの構造に大きく影響します。パネルが同種多面付けか異種面付けかによって、ネスティング、すなわちPCBの全体的な配置と互いのPCB間の配置関係に特に影響を及ぼす一方で、デパネリング工程により各PCB間の距離が決まります。

 パネル設計のガイドライン


PCBパネルを適切かつ安価に設計するには、以下の重要事項に従う必要があります。
パネルサイズ

パネルの寸法は通常、はんだ印刷機、チップマウンター、品質検査機(AOI)など、PCB実装工程で使用される装置の制約によって決まります。そのため、寸法が2インチ、すなわち約50mm未満のパネルは、コンベア幅の都合上加工できません。この問題を回避するには、パネルの端に空き領域を追加するか、パネルに追加のPCBを配置する必要があります。また、パネルの最大寸法もそれらの装置の加工可能サイズに依存します。ほとんどの機種では、最大寸法が12インチ×18インチ(約305mm × 460mm)などの標準化されたサイズになります。

パネル形状

特にフレックスPCBがそうですが、多くのリジッドPCBも、限られたスペースに実装することを想定して設計する必要があるため、輪郭が不規則で直線状にはなっていません。ただし、コンベアでパネルを搬送し、簡単に取り扱えるよう、パネルの端部のうち2か所は平行かつ直線状に設計する必要があります。そのため、使用されないランナー部(写真では薄緑色で表示)を不規則な形状の輪郭の付近に追加する必要があります。パネルの形状に基づきどの切削工程を選ぶかを判断することもできます。たとえば、ダイサーとルーター加工機には加工できる形状の制約があります。

搬送用マージン

個別の生産工程でパネルを実際に取り扱えるよう、パネルの各端部に幅の狭い空き領域を残しておく必要があります。これにより、パネルをコンベア、搬送ベルト、その他の治具でより簡単に搬送できます。

端部の幅は、パネルの構造により変わります。たとえば、単純構造(片面または両面)のものでは約12.5mm(0.5インチ)、多層構造の基板の場合は約25mm(1インチ)となります。多層構造の基板の場合、積層用位置合わせ穴を開ける必要があるため、より広いスペースが必要となります(下図)。パネルの設計段階にPCB生産に使用する装置に応じて各幅を考慮する必要があります。

PCBの間隔

採用するデパネリング方法に応じて、各PCB間の距離が大幅に異なる場合もあります。たとえばルーター加工の場合、切りしろとして約2~3mmの幅が必要です。これに対し、レーザーデパネリングでは、最小で数十μmまでPCBの間隔を狭めることができます。特に小さいPCBの場合は、こういったスペースの節約によってパネル1枚あたりに配置できるPCBの数が大幅に増えます。

切断面から実装部品までの距離

回路基板を分割する場合、PCB間の距離だけでなく、切断部から実装された電子部品までの距離も考慮する必要があります。この場合、電子部品の高さが非常に重要となります。傾向として、PCBに実装された実装部品高さが高いほど、より長い距離を確保する必要があります。ここでも、考慮すべき距離はデパネリング工法と切削工具によって異なります。レーザービームの幅はルータービットまたはダイサーブレードよりかなり小さいため、パネル上のスペースをここでも節約することができます。レーザー加工の場合、繊細な電子部品であっても切断面から約100µmの距離に配置でき、機械応力も熱応力も受けることはありません。

デパネリング工程の準備

効率の良いパネル設計を行うには、最終的な分割に備えてパネルを適切に準備する必要もあります。これにより、各基板がパネルから分割される速度が最終的にはやくなります。この段階では、以下に示す2種類の方法が広く採用されています。

ブレークアウトタブ

ブレークアウトタブは、最終的なデパネリング工程前にカット部分を事前に切削しておくことで、最終的なデパネリング速度とスループット時間を短くするための方法です。この場合、事前にルーター加工されたチャネルが各回路基板の周囲に配置され、材料が残された部分がタブになります。これらのタブの上下は、いわゆる「マウスバイト」で埋めることもできます。マウスバイトとは、各ルーター加工チャネル間に一定間隔で開けられる小さな穴のことです。

V溝:

パネルの分割工程のため幅広く採用されている手法がいわゆるV溝です。この方法では、パネルが同じ位置で上下からV溝加工され、それによって材料の約1/3が各面から除去されます。特に機械加工では、機械応力を軽減できます。理論上は材料の1/3のみを切削すればよいため、最終分離工程の速度が向上します。

この工程の欠点は、高さのある実装部品や下面に実装された部品には効果が限定的で、切断箇所が直線状にしかならないことです。

PCBのフルカット

もう1つのデパネリング方法として、V溝やタブなどのプリルーティングを用いずに回路基板を切断する方法があります。レーザーデパネリングは、切りしろと切削幅が最小のため、いわゆるPCBのフルカットにとりわけ大きな強みを発揮します。比較すると、レーザービームに必要な切りしろ幅は約200 µmであるのに対し、ルーター加工機に必要な切りしろ幅は、工具によっては2000~3000µmとなります。

この差によって実現されるスペースの節約により、特にPCBが小さくパネルが大きいほど、パネル1枚あたりに搭載できるPCBの数が大幅に増えます。ユーザーは、直接的に材料を節約すること、かつPCB生産の後工程でパネルをより効果的に加工することで間接的にも利益をえることができます。

まとめ

これまでご紹介したように、パネルの設計は複数の影響要素を考慮しなければならない複雑な作業です。これらの要件は、PCB生産のコスト、品質、収益性に大きな影響を及ぼします。特にデパネリング工程の選択は、パネルを最大限に、効率的に活用する上で非常に重要となります。機械加工には、大きな制約があります。

このページでは、お客様が作業する上で役に立つガイドラインを提示しました。ダウンロードエリアには、これらの説明をまとめたガイドラインを用意しています。

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